【勉強会レポート】ジェンダーやセクシュアリティの多様性とお寺の未来(講師:杉山文野さん)
- templeonlinesalon
- 2021年6月29日
- 読了時間: 6分
トランスジェンダーの杉山文野さんをご講師にお招きし、「SDGsお寺ネットワーク」と「Bラーニング」の共催にて、オンラインでの勉強会を開催しました。
テーマは、「ジェンダーやセクシュアリティの多様性とお寺の未来」。60名を超える方にお申込みをいただき、関心と必要性の高さを実感する勉強会でした。今回は、その勉強会をレポート致します。
◆杉山文野さんの体験
前半は、杉山文野さん自身の経験を通して、これまでの苦しみや生きづらさを語ってくださいました。
杉山さんは、もの心ついた時から、一度も自分のことを女性だと思ったことがなかったそうです。体は女性として生まれたものの、心は男性であり、ずっと違和感や生きづらさを抱えながら、幼少期から過ごしてこられたと言います。
例えば、幼稚園の入園式の時に、スカートをはくのが嫌で泣いて逃げ回ったり、学校でセーラー服や女性用の水着を着ないといけなかったことが嫌だったり、トイレに入りづらいとか、まるで女性の体の着ぐるみをきて生活をしているような感覚で苦しい思いをされたそうです。
頭がおかしい人と思われたらどうしようと、誰にも本音を言えず、「本来の自分を殺して生きる」か、それとも「本当に死んでしまう」か。選択肢がそのどちらかしか考えられなかったと言います。
一人で苦しみを抱えきれなくなり、ついには周囲にカミングアウトするようになったそうですが、友達が温かい反応を示してくれたことで、今まで全てを否定していた自分に対して、少しずつ自信が持てるようになったと言います。
◆LGBTQとは
また、LGBTQという概念や、性(セクシュアリティ)の多様性についてもお話いただきました。
・L(レズビアン)女性として女性が好きな人。 ・G(ゲイ)男性として男性が好きな人。 ・B(バイセクシュアル)同性も異性も好きな人。 ・T(トランスジェンダー)出生時に割り当てられた性と異なる性を自認している人。 ・Q(クイア、クエスショニング)規範的な性のあり方に疑問を感じる人や、規範的な性に属さない人など。
LGBTQとは、これらの頭文字をとったセクシュアルマイノリティ(性的少数者)の総称として使われる言葉です。ですが、実際はもっと多様だそうです。
そして、LGBTQの人口は、5~8%程度いること。日本人の四大名字である、佐藤さん、鈴木さん、高橋さん、田中さんの人口は、日本人のおおよそ5%、6%程度いるそうです。また、左利きやAB型の人も同程度おり、性的な少数者といっても、実は身近に多くいることを教えていただきました。
また、性(セクシュアリティ)は多様であり、一人一人が違うこと。だからこそ、こうあるべきというような固定観念を持つのではなく、多様を前提として、互いに一人ひとりの人として見て、関係性を育んでいくことの重要性を教えていただいたように思います。
◆平等と公平
そして、印象に残ったお話が、平等ではなく公平であろうとすることの大切さについてです。平等とは、皆等しくということであり、公平とは偏りなく皆等しくということ。
壁の向こう側を見るには、身長の高さによって、足場の高さを変えなければ見える人と見えない人が出てしまう。子どもであれば、より高い足場が必要になる。このように、皆が壁の向こう側が見えるように、それぞれに必要な高さの足場を用意するというような、偏りなく皆等しくということが公平であること。
それぞれが違うということを前提にして、その違いを補ったり、助け合ったり、公平さを大切にすると、誰もが暮らしやすい社会になるのではないか。そのようなことを教えていただきました。
◆多数だから正しいわけではない
また、誰しもがマイノリティとなったり、生きづらさを抱える可能性があることも教えていただきました。
杉山さん自身も、セクシュアリティにおいては少数派だけれども、他の点では多数派となることもある。その時に、多数派の意見を振りかざして、少数派が生きづらい社会にしてはいないか。生きづらさによって自死した当人が悪いのか。それとも、自死するまでに追い込んだ社会が悪いのか。マイノリティの課題ではなく、実はマジョリティの課題であることを、ご自身を例にして語っておられました。
我々は、誰しもがマイノリティ性や、生きづらさを抱える可能性がある。だからこそ、それぞれが違うことを前提にし、多数だから正しい、少数だから間違っているというような偏見を持ってはいないか。
そうした内省する大切さを教えていただいたように思います。
◆行動することの大切さ
そして、同性パートナーシップ条例や同性婚など、LGBTQに関する現在の動きについてや、ご自身も関わられている「東京レインボープライド」というパレード・イベントなどの取り組みについても教えていただきました。
多くの方が生きづらさを抱えているならば、そんな社会を変えていく取り組みの必要もあることを、活動から教えていただきました。そして、そうした活動から、当事者が理解や安心を得られるような、多様を前提とした場がうまれてきているのではないかと感じました。
また、当事者ではなくてもできることがあること。例えば、ウェルカミングアウトといって、Ally(アライ/積極的な理解者、支援者)であることを、ツイートなどを通してオープンにすることなど。積極的な理解者、支援者であることを公言することで、当事者がこの人にだったら、この場だったら安心して話せるのではないかというきっかけになること。小さな行動であっても、それが積み重なり、やがて大きなものとなっていくこと。批判するより提案を。そして行動をすることの大切さを教えていただいたように思います。
◆ご参加者からの意見
ご参加者からのご意見として、こんなにもLGBTQの方々がおられるのかという驚きや、これまで不用意な言動で誰かを傷付けていたのではないかといった反省、後悔の意見もありました。そしてまた、杉山文野さんがおられるという場の安心感の中、ご自身のセクシュアリティについてカミングアウトされる方もいました。
また、多様性について、仏教でも多様を前提とした価値観があるように、多様を受け止め、受け容れていこうとする姿勢の大切さを改めて学んだという意見がありました。お寺でできる工夫として、GBTQをあらわすレインボーカラーを、HPやSNS、配布資料など記載するなどして、生きづらさを抱える方がお寺に安心して訪れたり、コンタクトしていただけるような工夫をしたいというご意見もありました。
また、色眼鏡をかけて人を見てしまっていないか。こうあるべきという正義を他者に押し付けてしまっていないか。物事を正しく見ていくこと(正見)、正しい言葉遣いをしていくこと(正語)が重要だと感じたと言った意見もありました。
おかげさまで、とても学びの多いご縁をいただき、ありがとうございました。今後とも、「SDGsお寺ネットワーク」と「Bラーニング」では、皆様とよき場をつくってまいります。
(執筆・文責:Bラーニング 神崎修生)
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